私が保険会社を辞めた訳
私が、保険の営業の仕事を始めて、数ヶ月たった頃の話です。

そのころ、営業先にもだいぶ慣れてきて、顔も覚えてもらい、話ができる人もずいぶん増えていました。ある女性から、保険の相談を受けました。
「この保険、どう思う?保障が足りないって言われたんだけど」
と、彼女は、一枚の保険証券のコピーを見せてくれました。

それは、とても予定利率の高い時代に加入した、年金保険でした。年金保険と言っても、貯蓄機能の高さに加え、入院の保障も、少しだけど死亡保障もついていて、子供はまだいなくて、共働きの彼女にはピッタリの内容。保険会社も安心そうなところだったし、私には、特に問題が無いように思えました。

まだまだ新人だった私は、いつものように、会社に戻って、トレーナーに相談しました。

「この年金、すごくいいですよね。保険料も安いし、保障もついているし。 やめたらもったいないですよね。」
「そうねえ。いい保険ね。」
「これじゃあ他に、何も勧められないですよねえ。」
「定終(定期保険特約つき終身保険)勧めればいいじゃない、それやめてもらって。」
「えっ!この保険、やめさせるんですか?」
「だって、あなたは○○生命の人間でしょ、それがあなたの仕事でしょ?」

…これが私の仕事?

定期保険特約つき終身保険は、当時会社が一番力を入れていた商品でした。
掛け捨てが大部分の、死亡保障優先の、保険会社の利益の高い商品。
とにかく、誰にでも、勧めるのはこの商品からでした。

自分の成績のために、会社の利益のために、お客さんに損をさせるのが、私の仕事?
そのとき私は、すごく違和感を感じました。

確かに私は保険会社の人間。
けど、お客さんに損をさせてまで、自社の保険を勧めなきゃいけない、それが私の仕事なのかな…。

結局、彼女にも、トレーナーの勧めるプランを見せました。でも、やっぱり、これが一番だと勧めることはできなかった。ただ見せただけ。今の保険を、大事に持っていてくださいと言うことしかできなかった。会社から見れば、きっと使えないセールスレディだったことでしょう。

そんな出来事を、何度も繰り返し、何度も迷いながら、それでも仕事を続けていました。私のセールスレディ時代は、常に心の中での葛藤の日々でした。

会社に貢献するのか、お客様のことを優先に考えるのか。

新人で若かった私は、それすら、はっきりわかっていなかったのです。

しばらくして、私はFP(ファイナンシャルプランナー)の勉強を始めました。そのテキストの中に、私の心を動かし、決定付けた言葉がありました。

「ファイナンシャルプランナーは、顧客の利益を一番に優先させること」

目からうろこでした。
時々、契約をもらうたびに感じていた違和感。会社に貢献し、私のお給料も上がる。でも、別の誰かが損をする。私を信用してくれた誰かが。それで、本当にいいのかな。

そういう気持ちになっていた理由が、はっきりわかりました。
「自分のために」「チームのために」「会社のために」
そう言われて仕事をしてきた。けど、そんなことは、どうでも良かったのです。

私を信じてくれている、お客さんのことだけを考える。
それだけで、十分だったのです。
そんな簡単なことに、どうして今まで、気づかなかったんだろう。

いや、本当は気がついていたのに、気がつかないふりをしていたのかもしれません。
「自分のために」「チームのために」「会社のために」
そんな言葉の影に隠れて・・・。

それからしばらくして、無事ファイナンシャルプランナーの試験に合格し、私は、本当にお客さんのためになる仕事をしようと、努力しました。
でも、保険会社にいたら、どうしても成績がついてくる。成績のことを考えずに、顧客の利益のみを考えていても、あまるほど契約がとれるような、そんなセールスの才能は私にはありませんでした。

それに、営業先でも、まずは「○○生命の人間」として、私は認識される。決して「ファイナンシャルプランナー」としてではなく。お客さんのために、と思って話していても、「また○○生命がセールスしてるよ」と思われる。それが、すごくくやしかった。でも、私にはどうすることもできなかったんです。自分の力不足を痛感しました。

FPの資格を取って1年後、私は生保レディの仕事を辞めました。もちろん、このことだけではなく、辞めた原因はいろいろあります。今でも、辞めたことを後悔することもあります。

でも。

保険で困っている誰かの役に立てたらいいなあ。
今は、ただ素直に、そう思っています。
余計なことを考えず、そう思えることが、今、少しうれしいのです。



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2011.07.19 Tuesday
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